2026年9月某日。
私は、2か月間付き合ってきた人妻の渚さんと居酒屋で酒を飲んだ。
待ち合わせは17時00分。居酒屋では、渚さんの夫のこと、私が過去に付き合った女性のこと、渚さんが以前付き合っていた男性のことなど、これまであまり話してこなかったことを話した。
ホテルへは行かなかった。
ただ酒を飲み、食事をし、会話を楽しむデートだった。
19時30分前、私たちは駅へ向かった。
改札口近くの物陰でキスをした
渚さんが改札へ入る前、私たちは改札口近くの物陰でキスをした。
人通りの多い場所だった。誰かに見られてもおかしくない。それでも渚さんは、私とのキスを受け入れてくれた。
渚さんの唇はみずみずしかった。キスを終えたあと、私の唇には彼女の唾液が残っていた。
既婚者である渚さんが、人目を完全には避けられない場所で私とキスをしてくれた。そのことが嬉しかった。
私はかなり気分がよかった。
居酒屋ではいろいろな話ができた。別れ際にはセクシーなキスもできた。次に会う約束も決まっていた。
渚さんは改札を通った。
私は改札口の外から彼女を見ていた。
しかし、渚さんはなかなか振り返らなかった。
「あれ? このままホームへ行くのかな」
30秒ほど待ったと思う。
私は「まあ、いいか」と考え、その場を離れてJRの券売機へ向かった。
最後まで見届けていればよかったと、今は思う。
感謝を送った直後に届いた「ちょっとショックだな」
渚さんと別れてすぐ、私はLINEを送った。
渚さん、今日も楽しかったです。
いつも時間を作って会いに来てくれてありがとう。
来週もまた会おうね。
19時35分だった。
その1分後、渚さんから返信が届いた。
改札口入って後ろを振り返ったらもういなかった。
ちょっとショックでした。
私はこう返した。
あぁ、ごめん。
本当は、改札口でしばらく見ていたことを伝えようと思った。
渚さんが振り返らなかったから、そのままホームへ行くのだと思った。だから私も自分が利用する電車の改札へ向かったのだと説明したかった。
しかし、言い訳をしているような気がして送れなかった。
それ以上に、渚さんから届いた言葉を読んだ瞬間、LINEを開くことが怖くなった。
これから延々と文句を言われるのではないか。
そんな不安が湧き、その後に届いたメッセージを翌朝まで読めなかった。
幸せな余韻が一瞬で消えた
渚さんの「ちょっとショックでした」という言葉は、帰りの電車の中で読んだ。
居酒屋で楽しく話したこと。改札口近くでキスをしたこと。唇に残っていた渚さんの感触。
私の中には、幸せな余韻が残っていた。
帰宅してからも、LINEで「今日は楽しかったね」と言い合えると思っていた。
しかし、渚さんから最初に返ってきたのは、その日の楽しかった出来事でも、会えたことへの感謝でもなかった。
最後に私ができなかったことへの不満だった。
ほろ酔い気分が一気に冷めた。
渚さんは、一日すべてを否定したつもりなどなかったと思う。ただ、振り返ったときに私がいなくて寂しかった。そのときの気持ちを伝えただけなのだろう。
それでも私は、楽しかった時間よりも、最後の失敗だけを見られたように感じてしまった。
たった一通のLINEだけが原因ではなかった
翌朝、私は自分の気持ちを伝える長いメッセージを作り、LINEを開いた。
そこで初めて、前夜から朝にかけて渚さんが何通もメッセージを送っていたことに気づいた。
渚さんは、自分の言葉で私の気持ちが冷めたと思っていた。そして、私たちの関係が終わってしまったと不安になっていた。
やり取りを続けるうち、渚さんから次の言葉が届いた。
終わりにしよ。
好きだけど、これ以上俺さんを苦しめたくないから。
ただ、気遣ってるのは俺さんだけじゃないと思う。
その後、渚さんは謝り、やり直したいとも言ってくれた。
私にも渚さんを好きな気持ちは残っていた。今でも会いたいと思う。キスをしたいし、デートもしたい。身体の相性も、私がこれまで付き合った女性の中で最もよかった。
それでも私は、関係を終わらせることを選んだ。
いつ、その決断が固まったのかは覚えていない。
ただ、何ともいえない重圧から逃げたかった。
私が本当に欲しかったのは、お金へのお礼ではなかった
渚さんと会うときは、ホ別1という条件があった。
ホテル代とデート代は私が払い、それとは別に1万円を渡していた。
必要経費だと割り切っていた。渚さんから「いつもありがとう」と言われたこともある。
それでも心のどこかで、私は渚さんからこう言われることを期待していた。
「もう1万円はいらない。条件なしで会いたい」
私が欲しかったのは、お金を払ったことへの形式的なお礼ではない。
条件がなくても、好きという気持ちだけで会っている。その確信が欲しかったのだと思う。
だから感謝を伝えた直後に、できなかったことを指摘されたとき、自分が注いできた愛情、時間、費用まで受け取ってもらえていないように感じた。
もちろん、これは私の受け取り方だ。
渚さんは実際に店を予約し、行き先を考え、私の財布事情を心配してくれた。私にできないことを引き受けてくれていた。
気遣っていたのは私だけではない。渚さんの言葉は、その点では正しかった。
私は不倫の代償も恐れていた
渚さんとの関係を続けながら、私はずっと不倫が発覚した場合の慰謝料を恐れていた。
一時期は、渚さんが夫と共謀し、私に慰謝料を請求するための罠ではないかとまで疑っていた。
今から考えれば、かなり疑い深くなっていたと思う。
私は、夫が探偵を雇えるだけの経済力を持っているか確かめようとして、渚さんに夫の仕事を尋ねたこともある。
居酒屋デートで、渚さんが私より前にも別の男性と付き合っていたと聞き、夫と共謀しているという疑いはようやく消えた。
これからは、余計な疑いを持たずに渚さんとの時間を楽しめる。
皮肉にも、そう安心した日の帰りに、私たちの関係は終わり始めた。
改札口の出来事は小さい。
しかし、その小さな出来事によって、お金、感謝、不倫の発覚、慰謝料、愛情への不安など、私が見ないようにしてきたものが一気に浮かび上がった。
渚さんが私に与えてくれた、男としての自信
渚さんとの2か月間に、私たちは6回会った。
そのうち4回はホテルで身体を重ねた。ある日はホテルを出たあとにランチを食べ、神社にも立ち寄った。
関係が深まってからは、ホテルへ行かず、水族館やケーキバイキングを楽しむ日もあった。そして、最後に会ったのが居酒屋でのデートだった。
身体から始まった関係だったが、少しずつ普通の恋人同士のような時間が増えていた。
それでも、私に男としての自信を与えてくれたのは、やはり渚さんとホテルで身体を重ねた時間だった。
渚さんが私の身体を太ももで強く挟み、身体を震わせながら快感に達したと思われる姿は、今も強く記憶に残っている。
私は彼女を悦ばせることができる。
一人の男として求められ、受け入れられている。
その実感は、私に男としての自信を与えてくれた。満足感や征服感もあったが、それ以上に、彼女が私との行為を求めてくれていることが嬉しかった。
渚さんから受け取ったのは、性的な自信だけではない。
私は渚さんと初めて水族館デートをした。腕を組んで街を歩き、人のいない瞬間を見つけてキスをした。
夫のいる女性との不倫でありながら、私たちは身体だけではなく、恋人としての時間も過ごしていた。
もっと一緒に過ごしたかった。
関係が終わることなど考えていなかった。これからも会うのが当たり前だと思っていた。
私は渚さんから逃げたのだと思う
「喧嘩をしても仲直りしようね」
以前、渚さんはそう言った。私も「そうしよう」と答えた。
しかし、実際にすれ違ったとき、私は仲直りできなかった。
最後まで見送らなかったのは私だ。翌朝までLINEを見なかったことも、関係を悪化させた。
落ち着いて話せば、仲直りできた可能性はある。
あの一言で渚さんを嫌いになったわけではない。むしろ今でも魅力的な女性だと思っている。お別れした後も、やり直したいと思えるほどだ。
それでも私は、感謝してほしい場面で感謝されず、できなかったことを指摘されたと感じて、渚さんから逃げた。
もう一つ正確に言うなら、渚さんとの関係が背負っていた重圧から逃げたのだと思う。
好きという気持ちだけでは、不倫の危険や金銭的な不安、二人の感情の揺れまで引き受け続けられなかった。
不満を我慢するのではなく、伝える順番を考えてほしかった
私は、デートで不満があっても、相手に何も言うべきではないと主張したいわけではない。
振り返ったときに私がいなければ、渚さんが寂しく感じるのは当然だ。その感情を伝えることも間違いではない。
ただ、楽しいデートの直後、最初に伝える言葉の順番は大切だと思う。
もし、渚さんから次のようなメッセージが届いていたら、私は違う受け止め方をしたはずだ。
今日は会えて楽しかった。ありがとう。
ただ、改札で振り返ったときにいなくて、少し寂しかったよ。
これなら、その日の楽しい時間が二人の間で確認されたあとに、渚さんの寂しさも受け取ることができたと思う。
寂しさや不満は、我慢しなくていい。
しかし、相手がしてくれたことや二人で過ごした時間を一度も肯定しないまま、できなかったことだけを最初に伝えると、相手には一日すべてを否定されたように響くことがある。
同時に、私も渚さんの一言を関係全体の否定だと受け取らず、落ち着いて説明すべきだった。
彼女は「もっと一緒にいたかった」と伝えたかっただけかもしれない。
彼女が不満を先に伝え、私は傷ついて対話を止めた。
どちらか一方の言葉だけで終わったのではなく、その組み合わせが、もともと二人の間にあったズレを一気に大きくしたのだと思う。
大好きだった。それでも、ここで終わらせる
最後のメッセージを送り、私はLINE、出会い系サイト、電話番号のすべてをブロックした。
もう渚さんと連絡を取る手段はない。
ブロックした直後、少しホッとしたのは事実だ。
しかし同時に、毎日LINEを交わし、同じ街で会い、身体を重ねてきた恋人が突然いなくなったような喪失感が残った。
顔も可愛らしく、身体の相性も最高だった。
今でも渚さんとセックスしたい。キスをしたい。腕を組んで歩き、恋人同士としてデートをしたい。
それでも、このまま関係を終わらせたほうがよいと思っている。
渚さんとの恋は、一通のLINEだけで終わったわけではない。
その一言によって、二人が見ないようにしていた問題が表へ出た。そして私は、その問題を抱えながら関係を続ける覚悟を持てなかった。
大好きだった。
出会えてよかった。
男としての自信と、恋人として過ごす幸せを与えてくれたことに感謝している。
だからこそ、渚さんを悪い女性だったことにして忘れようとは思わない。
楽しいデートのあとに不満を伝えるなら、まず一緒に過ごした時間への感謝と、楽しかった気持ちを言葉にする。
不満を我慢するのではなく、一日全体を否定しない順番と表現で伝える。
そして不満を受け取った側も、一つの言葉だけで関係全体を判断せず、いったん立ち止まって相手の本当の気持ちを聞く。
それが、渚さんとの2か月間の恋と別れから、私が学んだことだ。
出会いは、身体だけでは終わらないこともある
私はワクワクメールで渚さんと知り合い、身体だけでは説明できない関係になった。
結果として別れることになったが、出会わなければ経験できなかった時間や、自分の中にある恋愛観を知ることができた。
出会い系だからといって、すべての関係が一度限りで終わるわけではない。ただし、相手にはそれぞれ事情があり、親しくなるほど楽しいことだけでなく難しい問題も生まれる。
それも含めて、自分に合う相手との出会いを探してみたい人は、無理のない範囲でワクワクメールを利用してみてほしい。
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