次も会えると思っていた。
一緒にケーキを食べ、帰り道は手を繋いだ。また会いたいと伝えると、彼女も同じ気持ちだと答えてくれた。
家に帰ってからのLINEも嬉しいものだった。私は、今日から二人の関係が少しずつ始まっていくのだと思っていた。
ところが、初デートから4日後。届いたのは、次の約束ではなく、これ以上の付き合いは難しいというメッセージだった。
まだ正式に交際を始めようと言い合ったわけではない。それでも、私は彼女と仲良くなりたかったし、これから何度も会いたいと思っていた。
これは、ハッピーメールで出会った女性との初デートと、その先がなくなってしまったときの私の記録だ。
1か月以上のやり取りを経て、初めて会った
ゆきこさんとのきっかけは、ハッピーメールだった。
私のプロフィール文章と写真の笑顔に惹かれた、と彼女からメッセージが届いた。
どんな人なのだろうと思ってプロフィールを見に行くと、何気ない日常を一緒に笑い合い、これからの人生を楽しいものにしていける相手を探していると書かれていた。
私も、カフェでケーキを食べながら「美味しいね」と笑い合える相手が欲しかった。この方となら仲良くなれそうだと思った。
彼女はそのとき関東に住んでいたが、大阪へ引っ越す予定だった。会うのは、引っ越しが済んで落ち着いてからになる。
それでも、待つことは苦にならなかった。会ってみたいと思える相手だったので、LINEだけのやり取りも楽しかった。
おはよう、おやすみ、天気、荷造りや荷解き、仕事、飼っている猫、お菓子、カラオケ。その日にあった出来事を話した。
私がアニソンなら歌えると話し、ガッチャマンを挙げると、彼女は同じ世代だねと返してくれた。少しでも新しいものになると分からないけどね、と返すと、彼女も同じだと笑っていた。
特別な話ばかりをしていたわけではない。普段の自分を少しずつ知ってもらっているような時間だった。
やがて彼女が大阪に引っ越し、落ち着いた頃に私から会いませんかと誘った。
会える嬉しさと、目の前でちゃんと話せるだろうかという不安が混ざり合った。心がふわふわするような感覚だった。
初デートは、また会いたいと思える時間だった
初デートの場所は、大阪のホテルにあるティーラウンジ。静かな席をお願いして予約を入れていた。
店の前で待っていると、ゆきこさんが声をかけてくれた。
可愛らしく、優しい表情の女性だった。私には、お人形さんのように見えた。
席に案内され、彼女はモンブラン、私はチョコレートケーキを選んだ。
食べている途中で、彼女がモンブランの底がサクッとして美味しいから食べてみて、と勧めてくれた。
え、いいの? 自分のフォークで食べたら間接キスになるよな。
54歳にもなって、高校生のようなことを考えてしまった。そんな内心を隠しながら、少し取り分けて食べた。
「美味しい!」
実際に美味しかった。でも、それ以上に、彼女が食べているケーキを分けてくれたことが嬉しかった。
さらに、彼女は私にプレゼントを用意してくれていた。私は何も用意していなかったので驚き、その場でお礼を伝えた。中身は帰宅してからのお楽しみにした。
誕生日が近いことも分かり、一緒にお祝いしませんかと提案すると、彼女も賛成してくれた。また会いたいと伝えると、彼女もぜひ会いたいと言ってくれた。
具体的な日程を決めたわけではない。それでも、私の中では、次に会う楽しみができていた。
ゲームの友達から誕生日を祝ってもらったことはある。でも、実際に会って、親や祖父母以外の人と誕生日を祝う機会は、これまでなかった。
二人でお祝いできたら嬉しい。そんな未来を思い浮かべていた。
手を繋いで駅まで歩き、帰宅後も嬉しさが続いた
会話の途中で、私は手を繋ぐのは好きですかと尋ねた。
彼女が好きだと答えてくれたので、店を出て駅まで歩くときに手を繋ぎませんかとお願いした。すると、まずはここで握手から、と手を差し出してくれた。
私はその手を握り、もう片方の手も添えた。柔らかい手だった。
2時間以上話した後、店を出た。彼女がどちら側に立とうかと聞いてくれて、私の右側を歩くことになった。
指を絡めて手を繋ぎ、駅へ向かった。
私は照れ笑いをしていた。彼女も笑っていた。手から体温が伝わり、恋人になったばかりの二人のように感じた。
ずっとLINEで話していた人に、やっと会えた。これからいろいろな場所へ一緒に出かけたい。そう思っていた。
帰宅してプレゼントを開けると、アニエスベーのハンカチだった。大切に使おうと思い、お礼のLINEを送ると、彼女とペアだと教えてくれた。
もらったときも嬉しかったのに、家に帰ってからもう一度嬉しくなった。
手を繋げて本当に嬉しかったこと、次のデートでも繋ぎたいこと、これからも仲良くしてほしいことを伝えると、ゆっくり長くよろしく、という返事が来た。
私は、彼女も前向きに考えてくれているのだと受け取った。
初デートは、自分の中では大成功だった。会っている間だけでなく、帰宅してからも楽しかった。
体調不良の連絡に安心した、その翌日だった
デートの2日後、彼女から連絡がなかった。
それまで毎日やり取りしていたので、何度もLINEを確認した。他の相手を探しているのだろうか。実は、あまり好かれていないのだろうか。
彼女が言ってくれた言葉や、見せてくれた態度まで疑っていた。
連絡がないだけで、こんなに不安になるのか。自分の気持ちが、思っていた以上に彼女へ向いていると分かった。
翌朝、体調不良で休んでいると連絡が来た。
心配する一方で、私は安心してしまった。連絡がなかった理由が分かったからだ。彼女がつらいときなのに、自分が安心したことには複雑な気持ちもあった。
ゆっくり休んでほしいと伝えた。
その翌朝は、こちらから挨拶を送らなかった。回復を知らせる連絡が来るまで、そっとしておこうと思った。
すると、彼女からメッセージが届いた。
体調は感染症によるものだったと説明した後、寝込んでいる間に二人の関係を考えた、と続いていた。
そこに書かれていたのは、お別れの言葉だった。
距離を理由に告げられた別れに、納得できなかった
彼女は、やり取りは楽しく心地よかったとしたうえで、ドキドキするデートより、気軽に出かけられる距離で、何かあったときにすぐ見守り合える関係を望んでいたと説明した。
二人の距離や生活状況では、望む形は難しい。そういう内容だった。
最初に浮かんだのは、「ずるいわ……」という一言だった。
私は神戸に住んでいる。彼女が大阪に引っ越すことも、会う前から分かっていた。私の家から梅田まで1時間ほどかかることも伝えていた。
それでもやり取りが続き、実際に会い、次も会いたいと言い合った。
距離が理由なら、どうして今なのだろう。
さらに、私に合う相手との出会いを応援する、という趣旨の言葉があった。
私が仲良くなりたかったのは、ゆきこさんだ。別の誰かとの出会いを応援してほしくて、1か月以上やり取りしてきたわけではない。
私は、これから付き合っていくかもしれない相手同士だと思っていた。その相手が突然、関係の外から私を応援する立場に回ったように感じた。
彼女にとっては気遣いの言葉だったのかもしれない。でも、私には慰めにならなかった。
近くで支え合える関係が欲しい。そう思ったときに、一度話してほしかった。
私なら、デートのときは彼女の住む街まで行くと答えたと思う。実際、近くで会ってもよいのではと考えたことはあった。ただ、近所では家族などに見られて気まずいかもしれないと、確認せずに想像していた。
もっと話せていれば。そんな考えが何度も浮かんだ。
自分の何が悪かったのか、初デートを何度も振り返った
距離という説明を、すぐには受け取れなかった。
手を繋ぎたいとお願いしたことで、身体目的だと思われたのではないか。私の希望を伝える一方で、彼女がどんな関係やペースを望むのか、聞かなかったことがまずかったのではないか。
手繋ぎは確認し、彼女も応じてくれた。帰宅後の返事も前向きに感じた。それでも、終わったという結果から、何か原因があったはずだと探していた。
友人との食事で私の話をし、何か言われて考えが変わったのでは、と想像することさえあった。
もちろん、そんな会話があったかは知らない。私が思い浮かべただけだ。
私は彼女と身体の関係も持ちたいと思っていた。ただ、それだけでなく、休日にケーキを食べ、カラオケに行き、美味しいものを一緒に楽しみたかった。身体の関係は、彼女も私とそうなりたいと思ってくれてからだと考えていた。
それでも、自分の気持ちが先に走っていたのではと悔やんだ。
戻れるなら初デートに戻って、これから私とどんな関係を作っていきたいですかと聞きたい。お互いに話し合って決めていきたい、と伝えたい。
ただ、そうしていれば結果が変わったのかは分からない。手繋ぎが別れの原因だったと確認できたわけでもない。
分からないまま、嬉しかった場面まで疑っていた。
理由を尋ねて、彼女が望む「近さ」を知った
私は最初、LINEで彼女の考えを受け止め、楽しかった時間への感謝を伝えた。
でも、気持ちは収まらなかった。納得できないまま終わることが、どうしても嫌だった。
その後、ハッピーメールで、差し支えなければ本当の理由を教えてほしいと尋ねた。手繋ぎなど自分の希望を優先し、彼女の望む関係を聞かなかったことへの後悔も伝えた。
彼女は返事をくれた。
一番の理由は距離だと、改めて説明していた。
待ち合わせて出かける恋愛より、生活の近いところで一緒に料理をしたり、近所を散歩したり、体調が悪いときに寄り添ったりする関係を望んでいる。同じ空間で落ち着き、安心できるような関係が欲しいと気づいた、ということだった。
説明を読んで、最初のLINEよりも彼女の望みが具体的に分かった。
私が考えていたのは、仕事が休みの日に会って、二人で出かける付き合い方だった。彼女が求めていたのは、日常のすぐそばに相手がいる関係だったのだと思う。
彼女の住む街へデートに行くことと、体調を崩したときにすぐそばにいられることは、同じではない。
神戸からなら、会いに行くまでに時間がかかる。行く意思があれば解決する、と言い切れる話ではなかった。
本当に距離の問題だったのか。腑に落ちた部分があった。
一方で、手繋ぎが何か影響したのではという疑いは、完全には消えなかった。ただ、彼女はそれを理由には挙げていない。そこは、私の中に残っている疑問だ。
感謝を伝えても、もっと会いたかった気持ちは残った
最後に、返事をくれたことと、思い出を残してくれたことへの感謝を伝えた。
「お元気で。それでは。」
送った後に思った。
終わった。すべてが終わった。
ゆきこさんとの、これからの時間がなくなったと感じた。
もっと仲良くなりたかった。もっと沢山デートしたかった。毎晩送っていたおやすみの挨拶も、もう送らない。
彼女の希望が分かれば、悲しさも整理できるのかと思っていた。でも、理由を理解することと、その終わりに納得することは違った。
初デートは、今もめちゃくちゃ楽しかった思い出だ。
モンブランを分けてもらったこと。手を繋いで駅まで歩いたこと。家に帰ってハンカチを開けたこと。それがペアだと分かって、また嬉しくなったこと。
あの日を思い出すと、やっぱり楽しかったと思う。
だからこそ、その先がなくなったことが、今も不思議で、残念で仕方がない。
彼女には、望む関係を選ぶ意思がある。私はそれ以上の説明や、考え直すことを求めず、最後の挨拶を送った。
でも、それで心まで綺麗に終われたわけではない。
次があると思っていた。
私は、ゆきこさんともっとデートしたかった。
「美味しいね」と笑い合える相手を探すならハッピーメール
今回の出会いは、初デートの先には続かなかった。それでも、1か月以上言葉を交わし、会える日を楽しみにして、一緒に笑った時間は本物だった。
そのきっかけは、ハッピーメールで届いた一通のメッセージだった。
「美味しいね」と笑い合える相手に出会いたいなら、まずは登録して、プロフィールを作るところから始めてみてほしい。気になる相手が見つかったら、料金を確認し、必要な分だけポイントを購入して、自分の言葉で声を掛けてみてはいかがだろうか。


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