あの日、私は勃起していた。
それなのに、彼女へ挿入することができなかった。
あの時の私は、「なぜ挿入できないのか」という答えばかり探していた。
しかし今思えば、本当に向き合うべきだったのは、勃起ではなく、自分の心だった。
この出来事は、私の身体ではなく、私の本音を知るきっかけになった。
第一幕 異変
勃起しているのに挿入できない。
そんな経験は一度もなかった。
セックスは今まで何度もしてきた。
失敗したことがないわけではない。お酒を飲んだ帰りにソープランドへ行き、勃起できず挿入できなかったことは一度だけあった。
だが、その時は理由がはっきりしていた。
「酒のせいだ。」
そう納得できた。
今回は違う。
酒は飲んでいない。
勃起もしている。
それなのに、彼女へ挿入しようとすると、どうしても入らない。
彼女の身体は十分に私を迎え入れる状態になっているように見えた。
それなのに、入らない。
「何でだ……。」
その一言が頭の中を何度も繰り返していた。
第二幕 焦り
もう一度試す。
角度を変える。
身体の位置を少し変える。
それでも入らない。
「おかしい。」
私は自分の勃起力を疑い始めた。
さっきまで硬かったはずなのに、挿入しようとすると力が抜けていく。
「歳なのか。」
「男として終わったのか。」
そんな言葉が頭をよぎる。
いや、まだ諦めるわけにはいかない。
私は彼女の上に覆いかぶさった。
肌と肌を密着させる。
キスをする。
彼女の温もりを感じながら、もう一度気持ちを高めようとした。
勃起は戻ってくる。
「今度こそ。」
そう思って挿入しようとすると、また力が抜けていく。
「何でなんだ。」
私は諦められなかった。
彼女がもっと気持ち良くなれば、自分も興奮を取り戻せるかもしれない。
そんなことまで考え始めた。
思いつくことは何でも試した。
頭で考えていたというより、本能に身体を動かされていた。
何とかしたい。
何とか挿入したい。
ただ、その一心だった。
しかし、結果は変わらなかった。
勃起はする。
だが、挿入しようとすると、その瞬間だけ身体が拒否するように力が抜けていく。
焦れば焦るほど、状況は悪くなっていった。
第三幕 疑心暗鬼
その頃には、私の頭の中は完全に混乱していた。
彼女は本当は痛いのではないか。
だから無意識に身体へ力を入れているのではないか。
「私は下付きだから。」
彼女はそう言っていた。
だが、それは理由にならない。
初めて会った日は問題なく挿入できた。
二度射精もした。
三度目も途中まではうまくいっていた。
それなのに、今日は何をやっても駄目だ。
私は理由を探し始めた。
もしかすると、彼女は意図的に拒んでいるのではないか。
もちろん、本当にそうだったのかは分からない。
今になって思えば、それは事実ではなく、追い詰められた私が必死に探していた「説明」だったのかもしれない。
自分が壊れたわけではない。
そう思える理由が欲しかった。
第四幕 ソファ
私は性行為をやめることにした。
これ以上続けても、お互い苦しいだけだと思った。
ベッドを離れ、ソファへ移動する。
お茶を口に運びながら、さっきまでの出来事を何度も思い返した。
彼女も隣へ座ってきた。
そして、私の肩へ身体を預けてきた。
私はその体重を支え切れず、身体が少し斜めになった。
その瞬間、妙な感覚に襲われた。
「この関係も同じなのではないか。」
私ばかりが支え続ける関係になるのではないか。
そんな考えが頭をよぎった。
第五幕 点と点がつながる
その時、不思議なことを思い出した。
彼女と手をつないで歩いた時、私は苦しかった。
一緒に食事をしている時も苦しかった。
恋人らしいことをするたびに、周囲の視線ばかり気になっていた。
そして、お金が必要になる場面では、いつも私が支払っていた。
一つひとつは小さな違和感だった。
しかし、それらを並べてみると、一つの形が見えてきた。
私はこの関係を楽しめていなかった。
第六幕 身体は嘘をつかなかった
あの日の私は、「勃起しているのに挿入できなかった理由」を探していた。
男として終わったのか。
彼女が拒んでいたのか。
セックスが下手だったのか。
答えはどこにも見つからなかった。
けれど、時間が経ってから気付いた。
私が探していた答えは、身体の中ではなく、心の中にあったのかもしれない。
私はずっと、「挿入できなかったこと」が問題だと思っていた。
しかし、本当の問題は違った。
私の心は、この関係を続けることに疲れ始めていた。
それを頭では認められなかった。
だから身体が先に反応した。
もし本当にそうだったのなら、あの日、拒絶していたのは彼女ではない。
私自身だったのかもしれない。
あの日の出来事は、男としての自信を失った日ではなかった。
自分でも気付いていなかった本音を、身体が先に教えてくれた日だったのだと思う。
人との出会いは、自分でも気付いていなかった感情を教えてくれることがあります。
私自身、この出来事があったからこそ、自分の本当の気持ちに気付くことができました。
もしあなたも新しい出会いを探しているのなら、その一歩が、自分でも気付いていなかった何かに出会うきっかけになるかもしれません。
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