関係を終わらせる側にも、こんな痛みがあるのだと初めて知った。
ハッピーメールでメル友を募集したところ、一人の女性からメッセージが届いた。
「プロフィールの笑顔に惹かれました」
嬉しかった。
私の募集を見て、写真を見て、話してみたいと思ってくれた。その気持ちに、ちゃんと応えたいと思った。
けれど、短いやり取りの末に、私は彼女にお断りのメッセージを送った。
自分の判断を後悔しているわけではない。それでも、本当に申し訳なかった。
声をかけてくれたことを大切にしたかった
私が募集したのは、メッセージだけで完結する関係ではなかった。
まずはサイト内で話し、気が合えばLINEを交換する。さらにやり取りを重ね、お互いに会いたいと思えたら、お茶をする。
その先に、恋人として付き合える未来があれば嬉しい。そんな思いで募集文を掲載した。
だから、女性からメッセージをもらえたことには期待もあった。
ただ、今振り返ると、最初に強く感じたのは「この女性をもっと知りたい」という気持ちよりも、「声をかけてくれた気持ちを大切にしたい」という思いだった。
私に関心を持ち、自分から行動してくれた。その行動を粗末にしたくなかった。
写真を見たあと、気持ちは動かなかった
彼女のプロフィールを確認した。
写真の女性は、私の好みの見た目ではなかった。
美人でなければ嫌だという話ではない。私自身が見て、自然に話してみたい、近づいてみたいと感じられるかどうか。その感覚が、彼女には湧かなかった。
メッセージを受け取ったときの楽しみな気持ちは、写真を見たあとには冷めていたと思う。
それでも、見た目だけですぐに断るのはどうなのか、と考えた。
私は54歳の独身で、恋人もいない。そんな自分が何を選り好みしているのか。そういう言葉も頭に浮かんだ。
まずは会話をしてみれば、印象が変わるかもしれない。
何より、せっかくメッセージをくれたのだから、ちゃんと返事をしなければならないと思った。
ただ、その時点で、私の中では「話したい」より「話さなきゃ」が大きくなっていた。
私は断る理由を探していた
返信を考えながら、何を話せばいいのか悩んだ。
プロフィールから話題を拾おうとしても、自分が興味を持てないことについて言葉を選ぶのは億劫だった。
相手を不快にさせずに、会話を続けるにはどうすればいいのか。
そう考えているうちに気づいた。
私は、彼女を知るための話題より、やり取りを終えるための理由を探していた。
本当は、恋人として気持ちが向いていなかった。
けれど、「顔が私の好みではない」とは言えなかった。そんなことを伝えれば、彼女を傷つけると思った。
同時に、見た目で人を選ぶ男だと思われたくない気持ちもあった。
相手を傷つけたくない。それだけではなかった。自分も悪く思われたくなかった。
だから私は、もっともらしい理由を欲しがっていた。
持病の話を聞いたとき、私は安堵した
会話の中で、彼女から持病について聞いた。
私はその病気について調べ、一緒に出かけるなら、食事や体調への配慮が必要なのかもしれないと考えた。
そして、断る理由ができたと思った。
ホッとした。
自分で募集しておきながら、声をかけてくれた女性とのやり取りを終える理由が見つかって安心する。
こうして文章にすると、ずいぶん身勝手に感じる。
ただ、彼女が実際にどの程度の配慮を必要としていたのか、私は知らない。私が調べて想像した負担と、彼女の暮らしの実情は別のものだ。
さらに、自分の気持ちを振り返ると、持病が決定的な理由だったとも言い切れない。
もし彼女の見た目が私の好みだったなら、同じ話を聞いても、やり取りを続けていた気がする。
病気の話より前に、私の気持ちはもう決まっていたのだと思う。
理由を伏せて、やり取りを終えた
私は「相性が合わないと感じた」と伝え、やり取りを終えたいと申し出た。
見た目についても、持病についても触れなかった。
詳しい理由を伏せたことは、今も最善だったと思っている。
ただ、彼女からすれば、納得できない断り方だったかもしれない。
少しメッセージを交わしただけで、相性とは何なのか。まだ何も分からないのではないか。
そう思われても仕方がない。
持病を伝えた直後だったから、それが理由だと受け取られた可能性もある。けれど、彼女がどう受け止めたかは確認していない。
私の中には、顔の好みが理由だと知られずに済んだ安心があった。
それを隠して、自分は相手への配慮だけで理由を伏せたのだ、と書くつもりはない。
彼女を傷つけたくなかったし、自分自身も守りたかった。それが私の本音だった。
「お付き合いくださりありがとうございました」
お断りのメッセージを送るとき、私が感じていたのは、申し訳なさと感謝だった。
本当にごめんなさい。
そして、メッセージをくれて、本当にありがとう。
その後、彼女から返事が届いた。
「お付き合いくださりありがとうございました」
短く、丁寧な言葉だった。
私に声をかけるとき、彼女には勇気が必要だったのかもしれない。
無視されたらどうしよう。断られたらどうしよう。そんな不安があったかもしれない。
本当のところは分からない。それでも、自分から声をかけてくれたことは確かだった。
その相手に断られたあとも、彼女は感謝の言葉で締めくくってくれた。
最後まで丁寧に接してくれた女性だった。
返事を読んだときも、私の気持ちは変わらなかった。
本当に申し訳ない。そして、ありがとう。
断られたときには分からなかった痛み
私は以前、別の女性から距離を理由にお別れを告げられたことがある。
そのときは納得できなかった。
なんで、お別れなのか。
もっと会いたかったし、関係を続けたかった。
オンラインゲームで二年間一緒に遊んでいた女性との関係が終わったときも、同じだった。相手から別れを告げられ、私は理由が分からないまま取り残されたように感じた。
今回、自分が断る側になって、初めて想像した。
あの人たちも、伝えるときには心苦しかったのだろうか。
関係を続ける気持ちはなくても、相手に申し訳ないと思っていたのだろうか。
もちろん、答えは分からない。今の私と同じ感情だったと決めることはできない。
ただ、関係を終わらせる意思と、相手に対する申し訳なさは、同時に存在する。そのことは、自分の経験として分かった。
断られた側にいたとき、私はその痛みを知らなかった。
判断に後悔はない。それでも申し訳ない
彼女とのやり取りを終えたことに、後悔はない。
恋人として気持ちが向かないまま、会う約束をすることはできなかった。
自分の好みを曲げてまで、恋人を見つけたいとも思わない。
彼女との未来を手放した寂しさや、惜しさもなかった。
それでも、申し訳なかった。
私と話してみたいと思い、行動してくれた。その気持ちに、彼女が望む形では応えられなかったからだ。
正しい判断をしたと思えても、心が痛まなくなるわけではない。
断ることも誠実さなのだと、信じたくなった。
少なくとも私は、返事をせずに放置するより、続けない意思を伝えたいと思った。
相手の好意を受け取ることと、同じ気持ちを返せることは、別なのだと思う。
それでも、出会いを探していく
今回のことがあって、募集を取り下げようかとも考えた。
自分から募集しなければ、声をかけてくれた人を断る場面も減らせるのではないか。
けれど、その痛みを避けようとしたら、出会いそのものから遠ざかってしまう。
今は、募集を続けながら、サイト内の日記やつぶやきでも、自分のことを伝えていきたいと思っている。
好きな食べ物、日々感じたこと、どんな時間を誰かと過ごしたいのか。
プロフィールだけでは分からない私を、相手が判断するための材料として残していきたい。
もちろん、それでお互いの気持ちが必ず一致するわけではない。
私が断ることもあれば、私が断られることもある。
それでも、自分の気持ちを曲げず、相手の気持ちも粗末にしないように、出会いを探していきたい。
今回、私は関係を終わらせたかった。
同時に、終わらせることが本当に申し訳なかった。
その二つの気持ちは、最後まで矛盾せず、私の中にあった。
気持ちが重なる相手を、これからも探したい
声をかけてもらえても、同じ気持ちになれないことがある。自分が会いたいと思っても、相手はそうではないこともある。
それでも、誰かとお茶を飲み、何でもない時間を一緒に楽しみたい。その気持ちは、今回の経験を経ても変わらなかった。
今回、女性とやり取りしたのはハッピーメールです。
まずは登録して、気になる人のプロフィールを読んでみる。日記で自分のことを伝えながら、話してみたい相手を探すのも一つの始め方だと思います。
「この人のことを、もう少し知りたい」
そう思える相手が見つかったら、必要な分だけポイントを購入して、自分の言葉でメッセージを送ってみてください。
私も、自分の気持ちを大切にしながら、出会いを探していきます。
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