「中に……出していいよ……」
渚さんは小さな声でそう言った。
その瞬間、私は彼女の優しさに包まれたような気持ちになった。
安心した。
自分という男を、丸ごと受け入れてもらえたような気がした。
ワクワクメールで知り合った渚さんは55歳。
私より1歳年上の既婚女性だった。
初めて会ったその日に、私たちはホテルへ行った。
そこで過ごした時間は、今でも思い出すほど私の記憶に強烈に残っている。
彼女は私の愛撫に「気持ちいい」と言ってくれた。
何度もオーガズムに達したとも言ってくれた。
そして最後には、私のすべてを受け入れてくれた。
だから私は思ってしまった。
次に会う時は、もう条件なんてないんじゃないか。
お金を渡したから会ってくれる男女ではなく、
「また会いたい」
「また抱き合いたい」
そう思って会う、恋人に近い男女になれるんじゃないか。
私はそう期待した。
しかし、その期待はホテルから帰宅したあと、渚さんから届いたLINEによって崩れることになった。
会う前から、私は渚さんとの「次」を想像していた
最初、渚さんとはワクワクメールでやり取りをしていた。
待ち合わせ場所。
日時。
会うための条件。
どこか事務的なやり取りだった。
私はそれが少し寂しかった。
せっかく一人の女性と出会ったのだから、もっと渚さん自身のことを知りたい。
そこで私は雑談を始めた。
「暑い日が続きますね。お身体の調子はいかがですか?私はサクレレモンを食べて体温を下げてます(笑)。渚さんは暑さ対策、何かしてますか?」
そんなメッセージを送った。
すると、
「日差しが強く暑く痛い感じがしますね。サクレレモン美味しいですよね。私はチューペットでクールダウンします」
と返ってきた。
さらに渚さんから、
「もしよろしければ、LINE交換しませんか?」
と提案された。
嬉しかった。
ただ、ここですぐLINE交換だけに飛びついたら、がっついている男みたいに見えるんじゃないか。
そんな妙なことまで私は考えた。
だから先にチューペットの話を返して、最後にさらっと、
「ぜひLINE交換したいです」
とIDを送った。
今考えれば、渚さんからしたらどちらでもよかったのかもしれない。
でも私としては、最後にIDをすっと差し出す方が格好いいような気がした。
54歳の男なりの、小さなこだわりだった。
LINEでつながってからは、お互いを何と呼ぶのか決めた。
好きな食べ物の話もした。
お寿司。
スイーツ。
チーズケーキ。
「おはよう」
「おやすみ」
そんな言葉まで交わすようになった。
渚さんから、
「これからも仲良くできるなら、たくさん行きたいところを考えられるからワクワクする」
という意味のメッセージも届いた。
私はますます期待した。
この人とはホテルへ行って終わりではない。
これからも会えるんじゃないか。
一緒に美味しいものを食べて、話をして、そして身体も重ねる。
一般的な恋人とは少し違う。
でも、身体だけでもない。
そんな男女の関係になれるんじゃないか。
少なくとも、私はそう思っていた。
「たのしみ」のスタンプだけでドキドキした
そして約束の日が来た。
朝、渚さんから、
「たのしみ」
というスタンプが届いた。
それだけでドキドキした。
今日、初めて渚さんに会う。
そして私たちは男女の関係になる。
もちろんセックスも楽しみだった。
でも、それだけではなかった。
これからこの女性と始まるかもしれない関係そのものに、私は期待していた。
待ち合わせ場所には、約束より15分ほど早く着いた。
私は渚さんの顔を知らなかった。
どんな女性が来るのだろう。
そんなことを考えていると、
コンコンコン。
車の窓を叩く音がした。
渚さんだった。
第一印象は、美人というより愛嬌のある女性だった。
髪型は私の好きなボブカット。
私は心の中で、
「大丈夫。この人なら大丈夫」
と思った。
身体の関係になる以上、私にとって外見的な相性も大切だった。
助手席に渚さんを迎え、約束していたものを渡して車を走らせた。
そして自然と手をつないだ。
ただ手をつなぐだけではなかった。
お互いに手の甲を優しくさすっていた。
私はその時点で、
「渚さんも俺を気に入ってくれているんじゃないか」
と思った。
ホテルに着く前から、二人の親密な時間は始まっていた。
身体を受け入れてもらうことで、心まで受け入れられたと思った
ホテルへ入り、二人きりになった。
キスをした。
抱きしめた。
肌を重ねた。
私は渚さんの反応を確認しながら、できるだけ優しく触れることを意識した。
「痛くない?」
「大丈夫?」
「気持ちいい?」
私は何度も聞いた。
渚さんは、
「大丈夫」
「気持ちいい」
と答えてくれた。
身体をねじらせ、声を出し、何度も気持ちよさそうな反応を見せてくれた。
私は嬉しかった。
なぜなら私には、以前ある女性から、
「俺さんはセックスが下手」
と言われた経験があるからだ。
当時の私は女性経験も少なかった。
だから仕方ないと思う部分もあった。
それでも、その言葉はどこかに残っていた。
私はいつか、
「俺さんとのセックスは最高に気持ちいい」
そう女性から言ってもらえる男になりたいと思っていた。
だから渚さんが私の愛撫に反応し、「気持ちいい」と言ってくれるたびに、
俺は以前の自分とは違うのかもしれない。
そんな自信が少しずつ生まれていた。
そして二人は身体を重ねた。
彼女は私を受け入れ、私も彼女を求めた。
私にとって、女性と一つにつながる瞬間には特別な意味がある。
ただ性欲を満たしているだけではない。
「この女性が今、自分を男として受け入れてくれている」
そんな感覚になる。
そして最後に、渚さんが私の耳元で言った。
「中に……出していいよ……」
その言葉が、私にはとても大きかった。
私は渚さんの中ですべてを出した。
そのあともしばらく、二人はつながったままだった。
キスをしながら、その状態を味わった。
私は幸せだった。
この時間がずっと続けばいいのに。
本当にそう思った。
そして私は、ここで大きな勘違いをしたのだと思う。
身体のすべてを受け入れてくれたのだから、心も自分を受け入れてくれたはずだ。
そんな意味を、私は勝手に付け加えていた。
私はまだ二人の時間にいた。でも渚さんは帰り始めた
ところが、セックスが終わってしばらくすると、渚さんは帰り支度を始めた。
時計を見ると、まだ16時過ぎだった。
約束は14時から17時までだった。
私は思った。
「あれ?」
まだ1時間近くある。
私は17時少し前まで、ベッドでいちゃいちゃしていたかった。
射精までしなくてもいい。
もう一度身体を重ねてもよかった。
抱き合っているだけでもよかった。
でも渚さんは、私に相談することなく帰り支度を始めた。
その姿を見て、ホテルで高まっていた熱が少しずつ冷めていくような感覚になった。
置いてけぼりにされたような気がした。
私はまだ「二人の時間」の中にいた。
でも、渚さんはもう日常へ帰り始めている。
そんな距離を感じた。
今なら、
「まだ時間ありますよね? 16時40分くらいまでもう少し一緒にいませんか?」
くらい言えばよかったと思う。
でも、その時の私は何も言わなかった。
そのまま渚さんを送り、私は家へ帰った。
私は「また会いたい」と送った
帰宅すると、私はすぐ渚さんにLINEを送った。
今日はありがとう。
とても楽しかった。
また一つにつながりたい。
今度はチーズケーキを食べに行こう。
そんな内容だった。
私としては、
「次はもう、条件で会う二人ではなく、男女として会いたい」
という気持ちを込めたつもりだった。
もちろん、そんなことは文章には明記していない。
でも私は勝手に、
これだけ身体を求め合ったのだから、渚さんにも伝わっているだろう。
そう思っていた。
返事が来た。
最初は嬉しい内容だった。
「今日はありがとう」
「俺さんに会えて嬉しかったよ」
そして、そのあとだった。
「ホ別1のことなんだけど、これからもホテルの時はいいのかな?」
私は画面を見ながら思った。
やっぱりそうか……。
ホテルで16時過ぎに感じた、あの嫌な感覚。
それとLINEの言葉が、自分の中でつながった。
1万円が惜しかったんじゃない
その時の私は、
「毎回1万円を渡す関係は嫌だ」
と思った。
でも、渚さんとの関係が終わってから何度も考えているうちに、1万円とは別の何かに私は傷ついていたのではないかと思うようになった。
あれだけ「気持ちいい」と言ってくれた。
身体をねじらせ、声を出し、何度もオーガズムに達したと言ってくれた。
私のすべてを受け入れてくれた。
それでも、次も条件は変わらなかった。
そこで私は、
「本当に気持ちよかったのだろうか?」
「俺に気を遣っていただけじゃないのか?」
と疑い始めてしまった。
条件の話が出たことで、楽しかったはずのホテルでの記憶まで揺らぎ始めたのだ。
それでも私は関係を終わらせた
その時の私は、自分がなぜそこまで引っかかっているのか理解できていなかった。
毎回お金を渡して会う。
それでは客と変わらない。
そんな関係は自分が求めているものではない。
そう考えた。
私は渚さんに、ホテルで過ごした時間への感謝を伝えたうえで、
継続してお金を渡す関係は望んでいない。
ご縁がなかった。
そう伝えた。
送信した時点で、
「多分これで縁は切れるだろう」
とは思っていた。
駆け引きではない。
「こんなことを言えば、次からお金はいらないと言ってくれるかもしれない」
と期待して別れを切り出したわけでもない。
その時の私は、本当にこれでいいと思っていた。
やがて渚さんから、
「ダメだったのね。ごめんね」
「ダメだったのならブロックしてくださいね」
「さよなら」
と届いた。
「さよなら」
その文字を見て、
終わったんだなぁ。
と思った。
ただ、その時点では心のどこかに、
「また何かの縁でつながることもあるかもしれない」
という小さな期待が残っていた。
ブロックされて初めて「戻れない」と分かった
その後、渚さんからLINEをブロックされた。
ワクワクメールからも連絡できなくなった。
その時だった。
あぁ……本当に終わったんだな。
もう戻れないんだな。
そう実感した。
そして不思議なことに、連絡できなくなってから、渚さんとの時間を何度も思い出すようになった。
LINEの過去ログも見返した。
ワクワクメールでのやり取りも見返した。
一番強く思い出すのは、やはりホテルでの時間だった。
二人の身体の相性は良かったと思う。
そして、
「中に……出していいよ……」
と言われた瞬間を思い出す。
あれほど自分を受け入れてくれた女性との関係を、自分から終わらせてしまった。
すると考えが変わってきた。
1万円でもよかったんじゃないか。
条件を受け入れて、もう一度会えばよかったんじゃないか。
別れを決めるのが早すぎたんじゃないか。
そんな後悔が出てきた。
時間を戻せるなら、私は違う返事をする
もし今、あのLINEが届いた瞬間まで戻れるなら。
渚さんから、
「これからもホテルの時はホ別1でいいのかな?」
と聞かれたら。
私はおそらく、
「ホ別1でいいよ。また会いたい」
と返す。
ただし、私の中で関係の位置づけは変わると思う。
条件なしなら、渚さんとチーズケーキを食べに行きたい。
寿司にも行きたい。
手をつないで歩きたい。
ホテルにも行きたい。
身体の関係を土台にしながら、恋人に近い関係になれたらいいと思う。
でも毎回条件があるなら、私からデートには誘わないだろう。
ホテルで会って、身体を重ねる。
渚さんから「一緒にチーズケーキを食べよう」と誘われれば喜んで行く。
でも自分からは誘わない。
私の中では、お金という条件が存在することで、関係の意味が変わってしまうからだ。
私が欲しかったのは「無料」ではなかった
ここまで考えて、ようやく自分の本音が分かった。
私が本当に欲しかったものは、
「無料でセックスできる女性」
ではなかった。
欲しかったのは、
「俺さんと、またセックスしたい」
という女性からの評価だった。
私は無意識に、
条件がなくなる=自分のセックスが認められた証拠
だと考えていたのだと思う。
だから条件を確認されたことで、
「俺はその程度だったのか」
と、勝手に採点されたような気持ちになった。
でも、本当は二つは別の話だった可能性もある。
渚さんが私とのセックスを本当に楽しんでいた。
それでも、ホテルで会うなら条件は変えない。
その二つは両立する。
もし今、渚さんから、
「俺さんとのセックスは本当に気持ちよかった。また抱かれたい。でも条件は変えられない」
と言われたらどうするだろう。
今の私は迷わない。
それならホ別1でも、また会いたい。
つまり私が知りたかったのは、金額ではなく、自分が男としてどう評価されたのかだったのだ。
もっと言えば、
「夫やこれまでの男性より、俺さんとのセックスが一番気持ちよかった」
「また俺さんに抱かれたい」
そんな言葉を、渚さんから聞きたかった。
過去に言われた、
「俺さんはセックスが下手」
という言葉を、渚さんからの評価で上書きしたかったのかもしれない。
渚さんが本当はどう感じていたのか、もう分からない
結局、渚さんが本当はどう感じていたのか、私は今も知らない。
条件を確認されたからといって、セックスが気持ちよくなかった証拠にはならない。
逆に、「気持ちいい」と言われたからといって、私が他の誰よりも上手かった証拠にもならない。
答えは、渚さんの中にしかない。
そして、その答えを勝手に決めつけることもできない。
だから私は、これから別の形で答えを探していこうと思う。
これから身体の関係になる女性には、相手の反応を見ながら優しく触れたい。
痛くないか。
心地いいか。
どうしてほしいのか。
言葉を掛けながら確かめたい。
そして、いつか複数の女性から、
「俺さんとのセックスは本当に気持ちいい」
と言ってもらえるようになった時。
私はようやく、
「自分は女性を満足させられる男になった」
と自分自身に言えるのかもしれない。
そしていつの日か、本当に好きになった女性から、
「またあなたに抱かれたい」
と言ってもらえたら。
過去に言われた、
「俺さんはセックスが下手」
という言葉も、ようやく私の中で上書きできるのかもしれない。
渚さんとの関係は、一度きりで終わった。
私は今でも、
あの時、違う選択をしていたらどうなっていただろう。
と思うことがある。
でも、一つだけ確かなことがある。
あの日、私が勝手に変わったと思っていたのは、
渚さんが提示していた「条件」ではなかった。
変わっていたのは、彼女と身体を重ねた私自身の気持ちだった。
そして、そのことに気付いたのは、
渚さんが私の前からいなくなった後だった。
出会ってみなければ、何が起こるかは分からない
渚さんとの出会いは、一度きりで終わりました。
後悔もあります。
それでも、私は渚さんと出会ったこと自体を後悔していません。
もしワクワクメールを使っていなければ、渚さんと出会うことも、あの日の時間を過ごすこともありませんでした。
そして、自分が本当は何を求めていたのかに気付くこともなかったと思います。
出会い系には、うまくいく出会いもあれば、思い通りにならない出会いもあります。
実際に会ってみなければ分からないこともたくさんあります。
でも、だからこそ面白い。
普段の生活だけでは出会わなかったはずの誰かと知り合い、自分の人生に新しい出来事が生まれることがあります。
私自身、54歳になってから、そんな出会いを経験しました。
「自分にも、まだ新しい出会いがあるかもしれない」
そう思った方は、まずはどんな女性がいるのか覗いてみてはいかがでしょうか。
↓ 私が渚さんと出会ったワクワクメールはこちら
【PR】人との出会いは、人生を上書きすることがあります。
≪18禁≫ワクワクメール


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