私は54歳になってペアーズに登録した。
登録した理由は単純だった。
誰かと出会いたかったからだ。
とは言え、結婚したいわけでもない。
恋人が欲しいのかと聞かれてもよくわからない。
ただ、母が亡くなり、父も既に他界した私は、誰かと一緒に食事をしたり、同じ景色を見たりする時間が欲しくなっていたのだと思う。
しかし、登録前の私は不安だらけだった。
54歳の男がプロフィール写真を載せて、本当に女性から反応があるのだろうか。
そもそも私は女性から見て魅力があるのだろうか。
そんなことばかり考えていた。
だから私はお金を払ってカメラマンにプロフィール写真を撮影してもらった。
写真代22,000円。
服代10,000円。
散髪代2,700円。
そしてペアーズ1か月分4,800円。
合計39,500円。
今思えばなかなかの出費である。
しかし、その結果は私の予想とは違っていた。
登録から1週間。
私のプロフィールには27件のいいねが付いた。
そして、
まりなさん
ちさとさん
ちかさん
みぃさん
まなみさん
くるみさん
ひよこさん
7人の女性とマッチングし、メッセージ交換をすることができた。
正直に言う。
私は驚いた。
54歳の自分にこれだけ反応があるとは思っていなかったからだ。
私は今回の経験で一つ確信したことがある。
プロフィール写真は本当に重要だということだ。
もちろん写真だけで全てが決まるわけではない。
しかし写真がなければ会話は始まらない。
私は今回の経験で、写真は自分を良く見せるためのものではなく、誰かと会話を始めるための入口なのだと知った。
もし私が写真を掲載していなかったら、彼女たちと話すこともなかっただろう。
その中でも、まりなさんとのやり取りは特に印象に残っている。
焼き鳥の話をした。
ビールの話をした。
何気ない雑談をした。
楽しかった。
私は少しずつ彼女に惹かれ始めていた。
会いたいと思った。
実際に飲みに行きたいとも思った。
しかし私は、自分の仕事や収入について話さなければならなかった。
今の私は個人事業主だ。
だが収入はほとんど無い。
将来への不安は自分でも感じている。
だから私は、そのことを正直に伝えた。
その結果、まりなさんから返ってきた言葉は厳しかった。
しかし同時に、とても誠実だった。
「経済面は大切なことではあるかな」
「少し不安に思いました」
その言葉を読んだ時、私は反論できなかった。
その通りだったからだ。
私は今まで、
収入は大事だ。
経済力は土台だ。
そう言ってきた。
だが私は、一人で生きていたから、その重さを本当の意味で理解していなかったのだと思う。
誰かと人生を共にするならば話は別だ。
私自身が不安を感じている状態で、相手に安心を与えることはできない。
私はそこで目が覚めた。
本当に目が覚めた。
そして私は思った。
自分の仕事で稼ごう。
もう一度稼ごう。
堂々と年収欄を公開できるようになろう。
仕事を聞かれても胸を張って答えられるようになろう。
そう思えた。
結果だけを見れば、私はペアーズでの活動を1週間で休止することになった。
彼女もできなかった。
まりなさんとも会えなかった。
正直に言えば、一度くらい飲みに行ってみたかった。
それは今でも思う。
しかし私は後悔していない。
なぜなら、誠実でいることを選んだからだ。
そして最後に、みぃさんからこんな言葉をもらった。
「雑に終わらせることもできるのに、このように丁寧になさるのは、素晴らしいと感じています。」
私はその言葉が嬉しかった。
まりなさんの言葉も嬉しかった。
みぃさんの言葉も嬉しかった。
今回のペアーズは恋愛という意味では成功ではなかったのかもしれない。
しかし、人として大切なことを学ぶ機会になった。
54歳の私にとって、それは決して小さな出来事ではなかった。
そしていつか。
自分の仕事で再び稼げるようになった時。
私はもう一度ペアーズに登録するかもしれない。
その時は今より少しだけ胸を張って、自分のことを話せる気がする。


コメント